「楽譜が読めていないようなんです」
そういうご相談を受けることが多いこの時期。
譜を読む、読譜(どくふ)とはどういうことなのかを考えるために、私のレッスンの中で実際に起こっていたことをご紹介してきました。
~これまでの読譜力についてのブログ~
この生徒さんたちは、みな読譜につまずいていた生徒さんです。
楽譜を読んで、その通りに指が動かせるようになるというのは本当に難しいことですね。
私は子どもの頃からピアノを弾いてきて、自分があまり苦労しないで楽譜を読めるようになったので、なかなか楽譜が読めるようにならない生徒さんのことが正直よくわからなかったのです。
音符を早く読めるようにするために考えられること、例えば音符カードを読んだり、音符のドリルを宿題にしたり、いろいろ試してみました。リズムが読めるようにリズム打ちもしていました。
でも、やっぱりうまくいかない生徒さんは、頑として読めるようにならなかったのです。
いったい何が足りなかったのでしょう。
これからお話しするのは、大手音楽教室から移ってきたWちゃんという生徒さんのレッスンでの話です。
うちの教室に来て間もなくの、この時のWちゃんの様子を思い浮かべていただけば、読譜というのがどういうことかということがわかっていただけるのではないかと思います。
Wちゃんが初めてうちの教室に来たのは4年生の時です。その時にはすでにそこそこ難しい曲を弾いていて、でもその一方で初見が苦手。体験レッスンを受けにきたときには、お母さんもそれをとても気にされていました。
入会が決まり、数度目のレッスンで私はWちゃんに初見練習書の本をやってもらうことにしました。
初見練習書とは、下の写真のような本です。
その場で初めて見る、短くて簡単な曲を弾く。それが初見の練習です。
短いものは4小節。長くても12小節の簡単なメロディー、または伴奏つきメロディー。
Wちゃんにやってもらったのは4小節の曲でした。
Wちゃんが前の教室で弾いていたのはこれよりもずっとずっと難しい曲で、調号もずっと多く、リズムも複雑な曲です。
だから本当であれば、この初見練習書にあるような簡単なものは1回で、まぁ、せいぜい2~3回で弾けないとおかしいのです。
でも、この日Wちゃんはこの初見練習書の中の1曲を、ついに正しく弾くことができませんでした。(*本来は初見の練習は一度しか弾きません。そうしないと初見の練習にならないので。)
では、Wちゃんはどんな風に間違って弾いていたのでしょう。
まず1回目。
音の読み間違いがたくさんありました。そして指使いが違い、さらにリズムも全く違っていました。そしてさらに、この曲はヘ長調ですが、シにつくはずの調号のフラットが抜けていました。強弱記号のmfも全く意識されていませんでした。
つまり、めちゃくちゃでした。リズムが間違っているので途中で拍子は変わるし、はっきり言って曲にはなっていませんでした。
ではそこからの話、続きはまた。