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読譜力④ ~言っている指番号と違う指を動かすY君~

今日も読譜力の話の続きです。

 

Y君もピアノが大好きな生徒さんでした。朝学校に出かける前に、いつも30分ぐらいピアノを弾いてから学校に行っているとお母さんから聞いたことがあります。

 

そんなに毎日練習しているのに、宿題の曲はいつも間違いだらけで、間違いを教えても直すことができないので、その頃始めたブルグミュラーはほとんど進めなくなっていました。

 

その日練習してきた曲にもたくさんの間違いがありました。私はまず指使いの間違いから教えることにしました。

 

楽譜の、間違っている箇所の指番号を赤ペンで丸く囲み、そこに気をつけて弾くように言いました。

 

「楽譜の指番号、ちゃんと見てね」

 

目はちゃんと楽譜を見て弾いていたので、赤マルは見えていたはずです。ですがYくんは指使いを直すことができません。

何回か弾かせてもやっぱり同じ。間違いは直りませんでした。

 

普通なら「家で練習して直しておいで」と言って宿題にするのですが、この頃勉強していた曲がみんな同じような感じで、何週宿題にしても直すことができず、合格の丸をあげることができないままだったので、さすがにもうそれはできませんでした。

 

次にしたのはこうです。

私が指番号を大きな声で言いながら、赤マルの数字をひとつひとつペンで指し、Y君に弾いてもらう。もちろん目線は楽譜においてです。

 

でもそれでもやっぱりだめなのです。

心の中で、なにかが崩れ落ちていくようでした。

これじゃぁ、家で一人で練習しても直せるわけがない。

 

他に教えようがなくなった私は、ピアノのふたを閉めました。

本人に楽譜に書いてある指番号を言ってもらい、それに合わせて空で指を動かしてもらうことにしたのです。

弾くのではなく、指を動かすというシンプルな動作にすることで、間違いに気がつくかな、と思ったのです。

 

でも 

「5・2・3・4」

と言いながら、

動いている指は「5・3・4・5」

 

えぇぇ!?

弾くんじゃなくて、指だけ動かしてもそうなるの?

さすがに私もあせりはじめました。

 

「え?ちがうでしょ?もう一度やってみて」と言って

今度は楽譜ではなく手を見てやってもらうと、そこでやっと、なんだかおかしいぞと本人も気づきはじめたようで、

数字を言っては「あれ?」数字を言っては「あれ?」

を繰り返し、あわてた様子で指を動かし始めました。

 

指番号もわかってなかったの!?

それって弾くとか弾かないとか、それ以前の問題。

 

でもね、ところがなんです。

あわてているY君の手をパーにしてもらって、「3のゆびどれ?」「4の指どれ?」と、1本ずつ確認すると、ちゃんと正しい指を折り曲げるのです。

 

なんでこうなるの!?

指の番号はわかっているのに、どうして別な指を動かすんだろう。

この時も私の頭の中は、ぐるぐるぐるぐるはてなマークが回っていました。